日本HPが販売するゲーミングPC、OMEN 25Lのパフォーマンスモデルをお借りしました。
機材貸出元:株式会社日本HP
Core i7-13700FとRTX 4070で人気ゲームをどれくらい動かせるかはもちろん、高負荷時の騒音や発熱についても検証結果をわかりやすくまとめています。
見た目もおしゃれでコスパの高いゲーミングPCを探している方は、ぜひじっくりご覧ください。
OMEN 25L(RTX 4070)の概要
OMEN 25Lがどういったパソコンなのか、特徴を整理すると以下の通り。
決算セール価格が業界最安レベル
WQHDの最高画質でサクサク快適
静音モードならゲーム中ほぼ無音
PC1台でVTuberとして活動可能
マザーボードの拡張性がとても低い
重いゲームを4Kで動かすには力不足
基本的なスペックから搭載されている内部パーツ、実際に人気ゲームを動かして計測したフレームレートまで、順に詳しくご説明します。
スペック
記事執筆時点で販売されているOMEN 25Lの主なスペックと価格を整理しました。
型番 | GT15-1775jp パフォーマンスモデル | GT15-1775jp パフォーマンスプラスモデル |
---|---|---|
OS | Windows 11 Home | |
CPU | Core i7-13700F | |
クーラー | 空冷 サイドフロー | |
チップセット | H770 | |
GPU | GeForce RTX 4070 | GeForce RTX 4070 Ti |
メモリ | DDR5-5200 16GB(8GB×2) Kingston FURY | |
ストレージ | 1TB NVMe SSD Gen4 Western Digital WD_Black | |
電源 | 800W(80PLUS GOLD) | |
無線LAN | 〇(Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2) | |
セール価格 税・送料込 | 205,920円 | 223,520円 |
今回お借りしたのはRTX 4070を搭載したパフォーマンスモデル。
どちらも期間限定(2023年10月31日まで)の大決算セール価格ではありますが、似たようなスペックで比較すると業界最安レベルです。
CPUやGPUの細かいスペックはこちらをご覧ください。
メモリやストレージもゲーム用途がメインであれば必要十分な容量を搭載。
注文時に増設できると便利なのですが、HPのオンラインストアはカスタマイズに非対応。
価格や納期、在庫状況は時期によって変動するため、最新情報は公式サイトにてご確認ください。
大決算セールについては以下の記事に詳しくまとめています。
OMEN 45L、40Lのレビュー
兄貴分にあたるOMEN 45L、40Lもそれぞれ実機をお借りして性能面を詳しくレビューしています。
4Kの最高画質で人気ゲームをサクサク楽しみたい方など、よりハイスペックなPCを探している方は、ぜひあわせてご覧ください。
ケース外観
デザインは旧モデルから変わらず。
これぞOMENといった、シンプルながら品のあるケースです。
正面から見て左側には強化ガラス製のサイドパネルを標準搭載。
天面はメッシュ状になっていますが、脱着可能な防塵パネルなどはありません。
ほこりが目立ってきたときは、ハンディクリーナーなどで掃除してください。
仕様上の寸法は高さが約396mm、奥行きが約448mm、横幅が約165mm。
ミドルタワーのケースとしては横幅が狭く、すっきりとコンパクトにまとまっています。
重量は約13.81kgと標準的。
底面もメッシュ状になっていますが、こちらにも防塵フィルターなどはありません。
床に設置しているとほこりを吸い込みやすいため、数か月に1回くらいは掃除することをおすすめします。
LEDライティング
電源をONにすると、ケース前面のロゴマークやCPUクーラー、メモリが発光。
強化ガラスパネルが採用されていることもあり、非常に映えます。
ケースのライティングはプリインストールされている「OMEN Gaming Hub」から、好みに合わせてカスタマイズできます。
撮影時は白色で統一しましたが、レインボーカラーや任意の色に設定することも可能。
パソコンが光っていると気が散る、という方は設定でOFFにしておくのがおすすめ。
アイドル状態(PCで何も動かしていない状態)が続くとライティングを自動でOFFにできたり、細かいところまで手が届くアプリです。
ケース前面にはRGBファンがないため、45Lや40Lと比べると派手さにはやや欠けるでしょうか。
グラボも文字部分が光りますが、こちらは白く光るのみでソフトウェアからの制御には対応していません。
インターフェイス
電源ボタンなどはケース天面にあります。
- マイク
- ヘッドホン
- USB Type-A 5Gbps ×2
- 電源
リセットボタン(強制再起動)は非搭載です。
独自のマザーボードが採用されていることもあり、背面の端子類は控えめ。
- USB 2.0 Type-A ×4
- SuperSpeed USB Type-C 5Gbps ×1
- SuperSpeed USB Type-C 10Gbps ×1
- ギガビットLANポート
- DisplayPort ×3
- HDMI ×1
Type-Cのポートが2つもあるのはとても便利。
また、無線LAN(Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2)も標準搭載。
ご家庭の都合で有線LANをつなげられない方も安心です。
オンラインゲームには有線でのネット接続を推奨します。
ケース内部
ケース内部はご覧の通り。
真っ黒のケーブルが使われていることで、内部の配線があまり目立ちません。
内部パーツへのアクセスは、ケース背面のボタンをワンタッチするだけ。
ドライバーなどの工具が不要で、ネジを紛失する心配もありません。
ケースファンは前後に1台ずつで、背面は実測で約10cm、前面は約12cmでした。
冷却パーツは必要最低限といった印象です。
ケース天面に空きスペースはありますが、ネジ穴が用意されておらず、簡易水冷クーラーへの交換やケースファンの増設はあきらめたほうが良いでしょう。
マザーボード
マザーボードはMicroATXに近いサイズで、独自仕様のものと思われます。
チップセットはH770を採用。
無線LANのカードも確認できました。
PCIeの空きスロットはひとつもなく、M.2 SSDの空きスロットも1台のみと拡張性に欠けるのが弱点。
M.2 SSDを増設するにはグラボを取り外す必要があるため、PC初心者の方にはハードルが高いかもしれません。
家庭用ゲームやスマホゲームの配信でキャプチャーボードを使いたい方は、内蔵タイプではなく外付けタイプを選んでください。
CPUクーラー
CPUクーラーはRGBファンを搭載したサイドフロータイプ。
ファンのサイズは実測で約10cmでした。
仕様によるとヒートパイプは3本とのことで、必要最小限のスペックといった印象。
ケース内部の高さが実測で約15cm程度しかなく、ケース背面側もパネルを取り外せないため、CPUクーラーの交換は難易度が高めです。
グラフィックカード
グラフィックカードはトリプルファンのRTX 4070を搭載。
傾きやグラつきが発生しないよう、専用パーツでがっちりと固定されています。
メンテナンスなどでグラボを取り外すのは少々大変ですが、サポートステイを別途買う必要がないのは便利です。
メモリ
メモリはKingston製のDDR5-5200 16GB(8GB×2)を標準搭載。
5,200MHzで動かすにはOMEN Gaming Hubからオーバークロックする必要があります。
オーバークロックを設定する際はPCの再起動が求められます。
大幅な性能アップは見込めませんが、動作が不安定になることもないため、せっかくなら性能を最大限に引き出して使うことをおすすめします。
CPU-Zで読み取った情報は以下の通り。
空きスロットは2つありますが、マザーボードが独自仕様ということもあり、市販製品との相性問題は未知数。
メモリの交換や増設をする際は、HPのサポートに問い合わせてからメモリを選んだほうがいいかもしれません。
ストレージ
M.2 SSDはWestern DigitalのWD_Black(Gen4)を採用。
旧モデルはヒートシンクなしの丸出し状態でしたが、きちんと搭載されたようです。
CrystalDiskInfoで読み取った情報は以下の通り。
ケース前面には3.5インチまたは2.5インチのストレージを増設できるシャドウベイも1台あります。
ストレージにつなげる2種類のSATAケーブルもシャドウベイの近くに用意されています。
ストレージの増設はそこまで難しい作業ではありませんが、パーツ改造による故障はメーカー保証が適用されない可能性があるため、くれぐれも慎重に判断してください。
旧モデルのOMEN 25Lではありますが、以下の動画でストレージ増設のやり方と、増設後に必須となる初期設定のやり方について解説しています。
電源
電源は800W(80PLUS GOLD)を採用。
NVIDIAの公式サイトによると、RTX 4070搭載マシンの最小システム電力は650W。
CPUには電力制限がかけられていることもあり、容量不足は一切心配無用。
旧モデルのOMEN 25Lは電源容量が500Wと少なめでしたが、海外でも評判が悪かったのか、だいぶ余裕のある容量になりました。
OMEN 25L(RTX 4070)の性能
ここからは各種ベンチマークソフトを使用して、搭載パーツの性能を数値化していきます。
ベンチマークはすべてOMEN Gaming Hubでパフォーマンスモードに設定して計測しています。
いずれも素人が計測したデータなので、あくまで参考程度にお考えください。
CINEBENCH R23
主なCPUをCINEBENCH R23のスコアで比較してみると以下の通り
筆者私物のCore i7-13700F(制限解除)と比べるとスコアがだいぶ落ち込んでいますが、これはCPUの消費電力が制限されているため。
CINEBENCH計測中の消費電力などをAfterburnerでモニタリングしてみました。
正確な数値は不明ですが、おそらくPL1(Long Duration Power Limit)が65W、PL2(Short Duration Power Limit)は155W前後に設定されているようです。
OMENはBIOSの構造が特殊で、CPUの消費電力に関する設定を見つけられませんでした。
電力制限をかけた状態でもシングルコアのスコアはそこまで落ちていないことがわかります。
一般的にゲームを動かすうえではシングルコアの性能が重要とされており、電力制限をかけてるからといって性能ダウンを実感することは滅多にありません。
BIOSの設定を変更すれば電力制限を解除できるかもしれませんが、発熱を制御しきれなくなる恐れがあるため推奨しません。
3D Mark
3DMarkのSpeedWayを走らせて、主なグラボとスコアを比較しました。
RTX 4070の性能はRTX 3080にやや届かないくらいで、重いゲームでなければ4Kでもそこそこ動かせる実力があります。
フルHDはもちろん余裕ですし、WQHDとは相性抜群のグラボです。
Crystal Disk Mark
Gen4らしい素晴らしい転送速度が出ています。
書き出しはやや速度が落ちているものの、体感できるほどの差はないため気にする必要はありません。
一般的なSSD(SATA)やHDDと平均的な転送速度を比較すると、以下の通り。
NVMe M.2 SSD (Gen 5) | 10,000MB/s |
---|---|
NVMe M.2 SSD (Gen 4) | 4,000~7,000MB/s |
NVMe M.2 SSD (Gen 3) | 2,000~3,000MB/s |
SSD(SATA) | 550MB/s |
HDD | 120~160MB/s |
静音性
市販の騒音計(サンコー小型デジタル騒音計)を使用して、PCに負荷をかけたときの騒音を計測しました。
計測時の室温は27度。
パフォーマンスモードと最適モード(標準と静音)の3種類で、用途ごとのおおよその平均値をまとめました。
ゲーム起動中の騒音にはムラがあるものの、パフォーマンスモードはなかなかうるさくなります。
最適モードならCINEBENCHやゲーム起動中でもほぼ無音で、ケースに耳を近づけるとほんのりと音が聞こえる程度。
搭載スペックを考えると非常に静かです。
ファンの回転は手動で細かく設定することもできますが、こだわりがなければ最適モードを選んでおけばよさそうです。
筆者が使用している騒音計の目安は以下の通り。
60dB~ | 掃除機に匹敵するほどうるさい 遮音性の高いイヤホンやヘッドセットが必須 |
---|---|
50~60dB | 大多数の人がうるさく感じる イヤホンやヘッドセットの使用が必須 |
45~50dB | ファンの音がやや気になりはじめる イヤホンやヘッドセットの使用を推奨 |
40~45dB | ファンの音は聞こえるが不快ではない スピーカーでもゲームはプレイ可能 |
38~40dB | PCに耳を近づけると音が聞こえる程度 スピーカーでも快適にプレイが可能 |
モード別の性能差
モードチェンジでどの程度性能に差が出るのか、Cyberpunk 2077のベンチマークモードを走らせた結果は以下の通り。
何度か同じ条件で試してみたものの、フレームレートの減少は微々たるものでした。
ゲームによって差はあると思いますが、この程度の性能ダウンであれば、静音重視の設定でプレイしたほうが快適にゲームを楽しめると思います。
最大パフォーマンスを引き出すか、静かにゲームを楽しむか、どちらを優先するかはお好みで判断してください。
冷却性能
PCに負荷をかけたときの温度も確認しました。
CINEBENCH R23は計測開始直後にPL2の設定値まで消費電力が一気に上がりますが、CPU温度は最大でも90度。
PL1の65Wで動作している間は60度台で安定していました。
実際の用途でCINEBENCHほど強烈な負荷をかけることは滅多にないため、この程度の温度上昇であれば心配無用です。
4Kの最高設定でCyberpunk 2077を動かしてみると、CPUとGPUはそれぞれ70~75度あたりをうろついていました。
フルHDでフォートナイトやVALORANTなど、軽めのゲームを動かしているだけなら、GPUは40~50度、CPUも60度台で安定。
キンキンに冷えているとは言えませんが、必要十分な冷却性能は備わっています。
PCゲームのフレームレート検証
まずは定番のベンチマークソフトを3種類試しました。
いずれも画質は最高設定で試しています。
フルHD | WQHD | 4K | |
---|---|---|---|
FF15 | 17,270 非常に快適 | 13,147 非常に快適 | 7,438 快適 |
FF14 暁月のフィナーレ | 30,520 非常に快適 | 24,292 非常に快適 | 13,084 とても快適 |
BLUE PROTOCOL | 29,611 極めて快適 | 21,131 極めて快適 | 10,438 極めて快適 |
4Kではややパワーダウンしているものの、WQHDまでならグラフィックの重いFF15でも「非常に快適」を出せており、なかなか素晴らしいです。
そこまで重いゲームでなければ4Kでも快適に楽しめそうです。
続いてMSIのAfterburnerを使用して、人気ゲームの平均フレームレートをフルHD解像度で計測しました。
フォートナイトはDirectX12とパフォーマンス、レンダリングモードごとに検証。
最高画質(DX12) | 92fps |
---|---|
競技設定(パフォーマンス) | 389fps |
DirectX12ではアンチエイリアスを「TSR最高」、テンポラルスーパー解像度は「推奨」、さらにハードウェアレイトレーシングもONで計測しています。
パフォーマンスモードの競技設定は3D解像度のみ100%で計測。
ガチ勢の方も十分納得できる性能です。
そのほかのゲームはすべて最高画質で検証した結果です。
Apex Legends | 245fps |
---|---|
VALORANT | 405fps |
Escape from Tarkov | 118fps |
Overwatch 2 | 408fps |
Apex Legendsは最高画質のままでも平均フレームレートは200を超えるため、カジュアルにプレイするなら画質を下げる必要がありません。
VALORANTやOverwatch 2などのシューター系ゲームも、画質を落とすことなく高フレームレートのヌルヌル感を味わえます。
高解像度での検証
WQHDと4Kでも人気ゲームをいろいろ動かしてみました。
レイトレーシングやフレーム生成、DLSSやFSRなどに対応しているゲームはいずれもONで検証しています。
ARMORED CORE VI | 107fps |
---|---|
Assassin’s Creed Mirage | 138fps |
Starfield | 88fps |
Cyberpunk 2077 | 84fps |
Forza Horizon 5 | 164fps |
Cyberpunk 2077はもっとも重たい設定のオーバードライブモードで検証。
DLSS 3.0やフレーム生成がうまく機能しているためか、WQHDならグラフィックが重いタイトルも最高画質でストレスなく楽しめます。
ARMORED CORE VI | 85fps |
---|---|
Assassin’s Creed Mirage | 102fps |
Starfield | 53fps |
Cyberpunk 2077 | 51fps |
Forza Horizon 5 | 115fps |
4Kでは全体的にフレームレートがダウン。
Cyberpunk 2077やStarfieldは平均60に届きませんでしたが、それなりに動かすことは可能。
戦闘で複数の敵に囲まれたり、場面によってはカクついてしまう恐れがあるため、サクサク感を重視したいなら設定を調整したほうがよさそうです。
ゲーム実況のライブ配信
ゲーム実況をTwitchでスムーズに配信できるかも検証しました。
配信ソフトは無料で使えるOBS(Open Broadcaster Software)を使用し、配信と同時に録画も実施しています。
Core i7-13700FとRTX 4070の組み合わせならスペックに余裕があるため、別売りのWebカメラを使用して、FaceRigでアバターも表示しながら試しました。
OBSの主な設定は以下の通り。
ゲームの画質 | 最高 |
---|---|
出力解像度 | 1080p(1,920×1,080) |
FPS共通値 | 60 |
映像ビットレート | 6,000 Kbps |
配信エンコーダ | ハードウェア |
音声ビットレート | 128 |
録画品質 | 高品質、ファイルサイズ中 |
録画フォーマット | mkv 配信後にmp4へ再多重化 |
録画エンコーダ | ハードウェア |
最高画質のApex Legendsで試したところ、平均フレームレートは常時200以上をキープ。
配信するゲームによっては多少設定の調整が必要になるかもしれませんが、PC1台でVTuberとしてゲーム実況の配信も可能です。
これからライブ配信に挑戦してみたい方はもちろん、すでにストリーマーとして活躍している方にも安心しておすすめできます。
拡張性を求めないならコスパ最強
レビューのまとめとして、OMEN 25Lの特徴をおさらいします。
決算セール価格が業界最安レベル
WQHDの最高画質でサクサク快適
静音モードならゲーム中ほぼ無音
PC1台でVTuberとして活動可能
マザーボードの拡張性がとても低い
重いゲームを4Kで動かすには力不足
期間限定のセール価格とはいえ、このスペックが20万円ちょいで買えてしまうのはお得すぎます。
弱点といえるのは拡張性くらいで、静音モードなら騒音とも無縁ですし、ゲーム性能については文句の付けどころがありません。
ストレージを何台も搭載したい方や、キャプボなどの拡張カードを使いたい方は、多少高くても他社製品を選ぶか、上位モデルの40Lを選んだほうがよいでしょう。
予算20万円くらいで、おしゃれでコスパの高いゲーミングPCを探している方は、OMEN 25Lを検討してみてはいかがでしょうか。
大決算セール終了後は値上がりする可能性があるため、気になっている方はお早めに。