基礎知識

サイコムのゲーミングPCは何がすごい?品質へのこだわりをインタビュー

本ページは広告・アフィリエイトリンクが含まれます
Sycomの本社と工場を見学

静音に特化したゲーミングPCや水冷化したグラボを搭載したマシンなど、ほかではあまり見かけない独自製品を多数展開するBTOパソコンメーカー、Sycom(サイコム)。

今回、本社と工場を見学させてもらい、品質にこだわる理由や独自製品の開発経緯など、普段なかなか聞けないことをインタビューさせてもらいました。

ゲーミングPCの購入や買い替えを検討している方は、きっと参考になるのでぜひご覧ください。

Sycomの特徴と気になるポイント

Sycom公式サイト
サイコムの公式サイト(セール情報は記事執筆時点のもの)

まず基本情報をおさらいしておくと、Sycomは1999年創業のBTOパソコンメーカーで、本社所在地は埼玉県の八潮市。

「埼玉コンピューター」を略した社名と思われることもあるようですが、正しくは「System&Computer」が由来とのこと。

ラインナップはデスクトップがメインで、10万円台で買えるエントリーモデルから100万円を超えるプロ向けモデルまで幅広く、カスタマイズの柔軟性が極めて高いのも大きな強み。

今まで何台か人気モデルをレビューさせてもらったので、あわせてご覧いただくと製品の特徴がよりわかりやすいです。

筆者が以前から気になっていた点は以下の通り。

  1. 競合他社より価格が高めな理由
  2. 静音グラボはどうやって作ったのか
  3. 水冷グラボはどうやって作ったのか
  4. CPUの電力設定はどう決めているのか

数々の人気モデルを企画・開発されてきた、プロダクトマネージャーの山田さんにお話を伺ってきました。(以下、青文字は山田さん)

株式会社サイコム プロダクトマネージャー 山田正太郎氏株式会社サイコム プロダクトマネージャー 山田正太郎氏

Sycomはなぜ価格が高めなのか

── 競合他社と比べて価格が高めな理由とは

まずマザーボードやSSD、ビデオカードに電源など、弊社は市販されている製品と同じものを選択できるようにしています。

大手さんだと大量調達でコストを抑えることができるのですが、弊社はカスタマイズの選択肢が多いことが強み。

部材の選択肢を増やすほど少量ずつの調達となってしまうため、価格を下げづらいという側面があります。

その分、カスタマイズ画面で各部材のメーカーや型番などを公開し、お客さんがどんなパーツを選んでいるのかをわかりやすくしています。

ストレージのカスタマイズ画面メインストレージだけでも10種類以上から選択可能

今は製品名で検索すれば各パーツの特徴や性能がすぐにわかる時代ですから、ひとつひとつ納得いただいたうえで選んでいただけます。

カスタマイズをしていない標準仕様でも、最低限の部材ではなく、必ずワンランク上のグレードを採用しているため、必然的に価格は上がってしまいます。

── 搭載するパーツを選定するポイント

たとえばケースだとFractal Design、ファンはNoctuaの製品を採用することが多いです。

両社とも価格の安さで勝負するメーカーではなく、品質を重視しているという点で信頼感があるからです。

とくにケースは実物をさわってもらうと、堅牢性などの品質面を実感いただけると思います。

ケース外観Fractal DesignのPop Silent White

Fractal DesignやNoctuaは代理店を介さずメーカーと直接やりとりをしていて、高品質な製品を少しでも安く提供できるように努力しています。

すべてとは言いませんが、安さを売りにしているメーカーとはお付き合いが少なめです。

── マザーボードにASRockが多い理由とは

私が入社する10数年前から、弊社では国内でいち早くASRockの製品を導入していました。

独自のBIOSを用意してくれるなど、ASRockは対応がとても柔軟で、過去にはオーバークロックモデルなどのコラボ製品を販売したこともあります。

昔はASRockに対してネガティブなイメージを持っている方もいたのですが、今ではもう完全にメインストリームで、品質面もとても良いです。

ASRockのマザーボードASRock Z890 Steel Legend WiFi

技術的な面でサポートしてもらうことも多く、これから発売する新製品へのアドバイスを求められることもあったり。

真摯に向き合ってくれるからこそ、ASRockの製品を採用することが多くなっているのだと思います。

ASUSも同様で、「マザーボードといえばASUS」と考えるお客さんも多く、事実として品質面はとても良いです。

たとえばROG Strixシリーズは機能面も充実してますし、価格は高めでもそれに見合った価値があると考えています。

ゲーミング向けの定番となっているTUFシリーズも品質が安定していますし、選ばれるお客さんは多いです。

弊社としてはお客さんがマザーボードを選べることが重要だと考えていて、ASRockとASUSの比率が高めではあるものの、MSIも一部製品で採用しています。

静音にこだわった「Silent Master」

Silent Master Graphics独自に開発したSilent Master Graphics
── オリジナルの静音グラボはどうやって作ったのか

弊社が独自に開発した「Silent Master Graphics」は、とある有名メーカーからグラフィックボードを調達して、自社で静音仕様に改造しています。

当然のことながらグラボメーカーの通常保証は切れてしまうんですが、BTOのシステム全体を弊社が保証するという仕組みです。

専用のファンカバー
自社で静音仕様にグラボを改造している

静音性で圧倒的な性能を誇るNoctuaのファンと、自作PCファンの皆さんにはおなじみの長尾製作所特注のファンカバーを組み合わせることで実現しました。

低負荷時はファンを止めるようにするなど、グラボメーカーさん協力のもと、こちらの指定する値でビデオBIOSも細かくカスタマイズしています。

Silent Master GraphicsのラインナップSilent Master Graphicsのラインナップ

静音には自信がありますが、空冷だと冷却性能に限界があるのも事実で、現時点のラインナップはNVIDIA GeForce RTX 4070 Ti SUPERまでとなっています。

NVIDIA GeForce RTX 4080 SUPER以上となると、弊社が求める基準をまだ満たすことができていません。

── Sycomが静音にこだわる理由とは

誰だってゲームや作業中にパソコンのファンがうるさかったら嫌ですよね。

パソコンの騒音にはいろんな要素がありますが、主な発生源はファンです。

だからこそファンの騒音を抑えるには、静音性に強いNoctuaが最適という判断になります。

Noctuaのファンは高額ですが、同じ風量で競合製品と比較すると圧倒的に静かで、冷却性能も申し分ありません。

公的第三者機関の防音シールド室にて性能を検証公的第三者機関の防音シールド室にて性能を検証

弊社の公式サイトでは都内の公的機関で計測したデータを公開しています。

実際の録音データをこちらのページで公開してますので、市販されているグラボと比べて圧倒的に静かという点をお分かりいただけると思います。

「静かです!」というのは簡単ですが、実際の騒音値まで公開しているところは多くないです。

ケース内部Silent-Master NEO B650A

静音PCを求めている方は意外と多く、Silent Masterシリーズがどれだけ静かなのかをしっかりとわかりやすくお客さんに伝えていきたいですね。

新しいCPUはもちろん、これから登場するであろう次の世代のGPUについても、積極的に静音化を進めていくつもりです。

独自に水冷化した「Hydro LC Graphics」

── 水冷グラボも自社で組み立てているのですか

はい、独自に調達したグラボと水冷ユニットを組み合わせて、社内で分解して水冷化しています。

一番新しいのは現時点で最上位のNVIDIA GeForce RTX 4090ですが、9年くらい前だったか、NVIDIA GeForce GTX 600番台からスタートした人気シリーズです。

実は自社でグラボを水冷化しているのは世界でも弊社だけ。

水冷ユニットを搭載したグラボも一部販売されていますが、弊社は空冷グラボと水冷ユニットをそれぞれ調達して、完全に独自開発しています。

Hydro LC Graphics独自に水冷化したHydro LC Graphics

ラジエーターにはNoctuaのファンを搭載して、冷却性能はもちろん静音性にもこだわっています。

Silent Master Graphicsには敵わないのですが、市販の製品と比べればはるかに静かです。

なぜなら水冷化したことでGPU温度を低く保てて、ファンの回転量を抑えられるから。

空冷かつ静音にこだわると冷却性能に限界がありますが、水冷ならNVIDIA GeForce RTX 4090はもちろん、どんなGPUも冷やせる自信があります。

── 水冷グラボは耐久性が心配という声もありますが

たしかに水冷ユニットを長年使うと冷却水は蒸発します。

水冷ユニットが登場した10数年前はともかく、今は技術も成熟していて、水漏れや蒸発といったトラブルはほぼ無視できるくらいになりました。

弊社の水冷グラボはすべてメンテナンスフリーで、冷却水の補充なども必要ありません。

かつては寿命が1年半~2年くらいと言われたこともありましたが、今は仮に24時間365日ラジエーターを動かし続けた場合でも、4~5年は余裕で持ちます。

ポンプのモーターやシーラントも品質がすごく向上してますし、事実として水冷グラボの水漏れトラブルなどは起きていません。

冷却水が蒸発する前に、ほかのパーツの寿命が来てしまう可能性が高いですし、そのころには数世代先のCPUやGPUが登場していると思います。

実際、7~8年前にGTX 980やGTX 970の水冷モデルを購入された方が、最近NVIDIA GeForce RTX 4080 SUPERやRTX 4090の水冷マシンを購入されたりしています。

CPUの電力設定も独自に調整

ASRock Z890 Steel Legend WiFiのBIOSASRock Z890 Steel Legend WiFiのBIOS
── Intel CPUで電力設定(PL1)が少し高めなのはなぜ?

弊社ではNoctuaのCPUクーラー、NH-U12S reduxを基準に最適な電力設定を決めています。

Noctua製品としては安い方ですが、他社製品のハイスペックモデルに匹敵する価格帯のCPUクーラーです。

Noctua NH-U12S reduxNoctua NH-U12S redux

125Wから253Wのマージンがある中で、高負荷時も80度台で収まるように、CPUごとに最適な値を探っていきます。

もちろんケースのエアフローなども影響しますから、ケースを閉じた状態で、高負荷のかかるベンチマークソフトなどを使って検証していきます。

検証専門の部門各種検証を専門に担う部門、取材時は最新クーラーを検証中

最近登場したIntelの最新CPU、Core Ultra 265Kについては、社内で検証を重ねた結果、PL1を159Wに設定。

CPUクーラーの冷却性能やケースのエアフローに余裕があるからこそ、なるべく高いパフォーマンスを発揮できるように調整したうえで出荷しています。

ゲーミングPCの製造工程を見学

Sycomの工場本社から歩いて数分の場所にある工場

本社から徒歩数分の工場へ移動して、実際の製造現場を見学させてもらいました。

工場内には最新パーツが無数に積まれていて、見ているだけでもワクワクします。

メモリやCPUはバルク品も多いようですが、市販品と変わらずパッケージのまま届くものも多いようです。

バルクのCPUトレイに並べられたバルク品のCPU

競合メーカーではほとんど見かけない、末尾に「T」のつくIntel CPUも発見しました。

ケースはパレットごと届くこともあるようで、注文ごとにここからパーツをピックアップ。

ケース
パレットごと届いたFractal Designのケース

Sycomは流れ作業で組み立てていく「ライン方式」でなく、スタッフ1人で最初から最後まで組み立てを行う「セル方式」を採用。

パーツ構成によって多少の差はあるとはいえ、ミドルタワーなら約30分、Mini-ITXも約40分で組み立てられるそう。

組み立て工程
取材時はMini-ITXの組み立てが進められていた

デスクにはパーツごとの特徴をまとめたメモ書きが貼ってあり、ミスなく効率的に作業を進めるためにさまざまな工夫をされているようです。

多数のメモ書き
マザーボードなどの特徴がまとめられた多数のメモ書き

背面の入出力端子に貼ってあった各種注意書きのシールも、すべて手作業で張り付け。

フロントパネルにあるSycomのロゴも、工場でスタッフがひとつずつ丁寧に張り付けています。

注意書きのシール
入出力端子などに貼られるシール

Sycomは配線をきれいに整えるだけでなく、ストレージ増設などの改造がやりやすいように、一部のケーブルにはばらしやすいバンドを採用。

1年でも長く快適に使えるように、先々のことも見据えて組み立てているそう。

組み立て工程
見た目だけでなく長く使うことを考えて配線を整理

CPUクーラーやマザーボードなどの余剰パーツはアクセサリーボックスにまとめて、パソコンと一緒に同梱。

アクセサリーボックス
CPUクーラーの余剰パーツなども同梱される

SATAケーブルなども付属するため、別途パーツを購入する必要がないのはとても便利。

(積極的におすすめはしませんが)ほかのPCにパーツを流用するときも役立ちます。

組み立て終わったPCは負荷テストへ

負荷テスト
複数の負荷テストが行われる部門

組み立てが終わると、順次負荷テストへ進んでいきます。

Sycomでは複数のベンチマークソフトなどを使用して、仕様通りのパフォーマンスを適切に発揮できるかを確認。

性能面だけでなく、高負荷時の発熱を適切に制御できているかも細かくチェック。

ひとつのベンチマークを走らせるだけでもそれなりの時間がかかるはずですが、手間を惜しまずに検証しているとのこと。

これだけテストを重ねていれば、お客さんの手元に届いて初期不良が発覚する、ということはほぼ考えられません。

動作チェックをクリアして出荷へ

補強材の貼り付け
段ボールにの持ち手部分に補強材をつけていく

すべてのチェックをクリアしたPCは順次梱包されていきます。

段ボールの持ち手部分に補強材を付けているのは、配送スタッフの方が持ちやすくするための配慮。

Sycomは店舗がなく、通販メインだからこそ、配送事故のリスクを少しでも下げられるように工夫しているとのこと。

パソコンの梱包
付属品や余剰パーツもきっちりと梱包される

完成したPCはまずケースの箱に収納され、アクセサリーボックスと一緒に大型の段ボールへ梱包。

隙間にはエアクッションがみっちりと敷き詰められていました。

オリジナルデザインの段ボール
伝票などが貼られて配送されていく

オリジナルデザインの段ボールはPCの大きさに合わせて複数用意しているそう。

梱包が終わると伝票が張り付けられて、お客さんの元へ運ばれていきます。

購入後のサポート対応も迅速に

サポート部門
サポート専門の部署で検証中のマシン

Sycomはサポート対応の速さも強み。

購入後に何かトラブルが起きたとき、機材を送ってもらって専用の検証部門で原因を究明。

速ければ機材を受け取ってから1~2日、おおむね3日以内で返送しているとのこと。

万が一搭載パーツに不具合が見つかったときは新品パーツへの交換となる場合もあり、少しでも速くPCを返送できるように努めているそう。

販売が終了した製品
ラックに積まれた過去に使用していたパーツたち

すでに販売が終了した製品も、古いパーツを一定数保管して、トラブル発生時にすぐ社内で検証ができるように準備。

ざっと見ただけでも、数世代分のマザーボードやCPUを保管しているようです。

サイコムの延長保証
最大3年まで保証期間を延長できる

Sycomの通常保証は購入から1年間ですが、有料オプションで最大3年まで延長も可能。

だいたい3割くらいのお客さんが延長保証へ加入されるそう。

Premium Lineは通常保証が標準で2年です。

自作PCの経験が豊富な方や、パソコンの扱いに慣れている方なら多少のトラブルは自力で対処できると思いますが、不慣れな方はサポートを頼ったほうが安心です。

購入前の相談にも対応

購入後のサポートだけでなく、Sycomは購入前の相談にも対応。

数あるラインナップでどれを買えばいいのか、カスタマイズはどうすればよいのかなど、ベテランのスタッフの方からアドバイスをもらえます。

問い合わせフォームやメールでの連絡はもちろん、電話での対応も可能。

今はネットでいくらでも情報が手に入りますから、ある程度はご自身で調べてみることをおすすめしますが、どうしても迷ったときは利用してみてはいかがでしょうか。

サイコムの電話対応

ただし電話対応は対応時間が限られています。

平日の日中に電話がしづらい方は、問い合わせフォームやメールでの連絡が便利です。

高品質なゲーミングPCならSycom

Radiant GZ3600Z890
カスタマイズの選択肢がとても広い、人気のRadiantシリーズ

Sycomの並々ならぬこだわりっぷりは以前から理解していたつもりでしたが、今回の取材を通じて、一層納得感が深まったように感じます。

価格だけで比較すると高く思えても、ケースや搭載パーツを細かく見ていけば、きっと納得してもらえるはずです。

ゲーミングPCは高い買い物ですし、少なくとも数年は使い続けるものですから、品質面に注目してみるのも選び方のひとつ。

こだわりのつまったゲーミングPCが気になる方は、ぜひSycomをチェックしてみてください。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です