サイコムが販売するG-Master Velox Mini B650A AMD Editionをお借りしました。
機材貸出元：株式会社サイコム
BTOでは珍しいMini-ITXケースを採用し、コンパクトさと手軽さを両立させた最新モデル。
人気ゲームを快適に動かせるのか、冷却性能は問題ないのかなど、詳しく検証しました。
G-Master Velox Mini B650Aの概要
G-Master Velox Mini B650A AMD Editionがどういったパソコンなのか、特徴を整理すると以下の通り。
片手で持ち運べるコンパクトケース
人気ゲームが高画質でサクサク快適
最新グラボにもカスタマイズが可能
設定を工夫すればライブ配信も可能
ネジ止めのパネルが多く分解は大変
高負荷はCPUクーラーの音が大きめ
基本的なスペックから搭載されている内部パーツ、実際に人気ゲームを動かして計測したフレームレートまで、順に詳しくご説明します。
スペック
貸出機の主なパーツ構成は以下の通り。
| OS | Windows 11 Home 64ビット |
|---|---|
| CPU | Ryzen 5 9600X |
| GPU | GeForce RTX 4060 |
| メモリ | DDR5-5600 16GB（8GBx2） |
| ストレージ | 1TB NVMe SSD Gen4 |
| 販売価格 ※税・送料込 | 233,930円 |
標準仕様だとCPUはRyzen 5 9600が搭載されます。
CPUとGPUの細かい情報を知りたい方は、こちらをご覧ください。
今回はAMD Editionをお借りしていますが、Intel CPU搭載モデルも販売中。
メモリやストレージはもちろん、CPUやグラボまで、予算や用途に合わせて柔軟にカスタマイズできるのがサイコムの強み。
コンパクトケースゆえに搭載できるパーツには限界があるものの、GeForceはRTX 5070まで、RadeonもRX 9070やRX 7800 XTにアップグレードできます。
価格や納期、在庫状況は時期によって変動します。最新情報は公式サイトにてご確認ください。
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クーポンコードや使い方は以下の記事にまとめているので、ぜひご活用ください。
ケース外観
ケースは自作派にも人気のDeepCool CH160を採用。
Mini-ITXのコンパクトケースで、天板に持ち手がついているのが特徴。
カラバリでブラックも選択可能です。
仕様上の寸法は奥行336×横幅200×高さ283.5mm。
ゲーミングPCとしてはとてもコンパクトで、一般的なデスクにも設置しやすいサイズ感。
尻尾のように伸びているのは電源ユニットの延長ケーブルで、取り外すことはできません。
持ち手はかなりしっかり作られており、多少の重さはあるものの、片手でPCを持ち運べます。
たとえば普段は自室のデスクでFPSゲームを楽しみつつ、アクション系のゲームはリビングの大画面テレビにつなげて遊ぶ、といった使い分けも可能。
一般的なミドルタワーケースだと移動させるのは一苦労ですが、このサイズなら持ち運びも簡単です。
フロントパネルは全面メッシュになっており、空気を吸い込みやすい構造です。
底面も全面メッシュパネル。
ケースの内側にほこりの侵入を防ぐための防塵フィルターが仕込んでありますが、取り外すにはグラボなどをいったんバラす必要があり、メンテナンスは少々大変です。
ケースの説明書や余剰パーツも同梱されます。
インターフェイス
電源ボタンなどはフロントパネルの下側にあります。
- USB 3.1 Type-C ×1
- USB 3.0 Type-A ×2
- Audio ×1
- 電源
背面側の入出力端子は控えめ。
- USB 5Gbps Type A ×2
- USB 10Gbps Type A ×3
- USB 20Gbps Type C ×1
- 2.5Gbps LAN
- HDMI ×1
- DisplayPort ×3
用途がゲームメインであれば問題ないと思われますが、USBポートが足らない場合、別途USBハブなどを用意したほうが良いでしょう。
Wi-Fi 6EやBluetooth 5.3にも対応。
無線LANを使用するときは、同梱されるアンテナを使用することをおすすめします。
初心者の方が間違えないように、注意書きのシールも貼ってあります。
ケース内部
ケース内部はご覧の通り。
このケースには裏配線のスペースがほぼありませんが、きれいにケーブルが整えられています。
光学ドライブは搭載できないため、必要な方は外付けで代用するしかありません。
このケースはほぼすべてのパネルがネジで固定されており、ケース内部へアクセスするには少し手間がかかります。
ネジも小さいため、パネルを外した際に紛失しないよう注意が必要です。
元々ファンがひとつも付属しないケースですが、サイコムではNoctua NF-F12 PWMを標準で搭載。
ケースファンの変更や追加など、カスタマイズには対応していません。
マザーボード
マザーボードはMSIのMPG B650I EDGE WIFIを採用。
BTOでMSIのマザーボードを見かけるのは久しぶりです。
CPU-Zで読み取った情報は以下の通り。
10層PCBにフェーズ数は8+2+1と、いわゆるミドルスペックのマザーボードです。
CPUクーラー
CPUクーラーはDeepCoolの超定番モデル、AK400を採用。
冷却性能は申し分なしですが、静音性にもこだわるならNoctua製のCPUクーラーへカスタマイズすることをおすすめします。
グラフィックカード
標準仕様ではGeForce RTX 4060を搭載。
ケース自体は長さが305mm、3スロットまでのグラボを搭載可能。
3スロットを超える巨大なハイエンドグラボは搭載できないものの、サイコムオリジナルのSilent Master Graphicsも選択可能。
グラボは在庫状況が日々変動しているため、こまめに公式サイトをチェックすることをおすすめします。
メモリ
メモリはヒートスプレッダ非搭載のシンプルなものが2枚。
CPU-Zで読み取った情報によると、Micronの製品が採用されていました。
用途がゲームメインだとしても、予算に余裕があるなら32GBにカスタマイズしておくことをおすすめします。
ストレージ
M.2 SSDはCrucialのミドルモデル、P3 Plusの1TBを標準搭載。
CrystalDiskInfoで読み取った情報は以下の通り。
M.2 SSDの空きスロットは1台あるものの、スロットがあるのはマザーボードの裏側。
増設するにはケースからマザーボードを取り外す必要があり、作業難易度はだいぶ高め。
フロントパネルの内側には2.5in、3.5in共用のシャドウベイが用意されています。
120mmファンも取り付けられますが、いずれも片側しかネジで固定できないため、安定性にはやや欠けます。
電源
台湾の老舗電源メーカー、CWTのSFX電源が採用されており、容量は650W（80PLUS GOLD）。
ケース自体はATX電源にも対応していますが、その場合、フロントパネル内側のシャドウベイが使えなくなります。
最大で850WのSFX電源へカスタマイズできるため、将来的にもっとハイスペックなグラボを搭載するつもりなら、電源容量に余裕を持たせておいても良さそうです。
G-Master Velox Mini B650Aの性能
ここからは各種ベンチマークソフトを使用して、搭載パーツの性能を数値化していきます。
いずれも素人が計測したデータなので、あくまで参考程度にお考えください。
CINEBENCH R23
前世代のRyzen 5 7600Xから順当にスコアがアップ。
ハイスペックモデルと比べて注目度は低めですが、Ryzen 5 9600Xはとてもバランスの良いミドルクラスCPUです。
PBOや105Wモードなどは設定されておらず、TDP:65W、PPT:88Wのデフォルト設定のままと思われます。
Speed Way
RTX 4060としては標準的なスコア。
一部の極端に重たいゲームを除けば、フルHDの高画質で快適に楽しめる実力があります。
最高画質でサクサク動かすことにこだわるなら、上位モデルを選んだほうが良いでしょう。
Crystal Disk Mark
ミドルクラスのGen4 SSDらしい転送速度です。
ハイスペックモデルにカスタマイズすればさらに転送速度は速くなりますが、実用上ストレスを感じるような場面はほとんどないはずです。
一般的なSSD（SATA）やHDDと平均的な転送速度を比較すると、以下の通り。
| NVMe M.2 SSD （Gen 5） | 10,000～15,000MB/s |
|---|---|
| NVMe M.2 SSD （Gen 4） | 4,000～7,000MB/s |
| NVMe M.2 SSD （Gen 3） | 2,000～3,000MB/s |
| SSD（SATA） | 550MB/s |
| HDD | 120～160MB/s |
静音性
市販の騒音計（サンコー小型デジタル騒音計）を使用して、用途ごとの騒音を計測しました。
AK400は高負荷時の音が大きくなりがちで、CINEBENCH計測中などは多少うるさくなります。
静音性にこだわるなら、CPUクーラーをNoctuaのNH-U12S reduxなどにカスタマイズすることをおすすめします。
ゲーム起動中はCPUの負荷がそこまで高くないこともあり、グラボのファンが回る音は聞こえてくるものの、不快に感じるほどではありません。
筆者が使用している騒音計の目安は以下の通り。
| 60dB～ | 掃除機に匹敵するほどうるさい 遮音性の高いイヤホンやヘッドセットが必須 |
|---|---|
| 50～60dB | 大多数の人がうるさく感じる イヤホンやヘッドセットの使用が必須 |
| 45～50dB | ファンの音がやや気になりはじめる イヤホンやヘッドセットの使用を推奨 |
| 40～45dB | ファンの音は聞こえるが不快ではない スピーカーでもゲームはプレイ可能 |
| 38～40dB | PCに耳を近づけると音が聞こえる程度 スピーカーでも快適にプレイが可能 |
冷却性能
用途ごとの冷却性能もチェックしてみました。
CINEBENCH計測中はおおむね75度前後で安定。
キンキンに冷えているとは言えないものの、CPU使用率100％で80度以下をキープできるなら冷却性能は問題ありません。
続いてFF14ベンチを4Kの最高設定で走らせて、GPUの温度をチェック。
70度に届かないくらいで安定しており、ホットスポットの温度も80度前後で安定。
ツインファンのグラボとしては標準的な冷却性能です。
ゲーム起動中のCPU温度は60度台で安定。
ケースファンは背面側に1台のみですが、今回のケースはほぼ全面がメッシュパネルとなっているため、見た目以上にエアフローはしっかりしています。
もう少し冷却性能を高めたいなら、CPUクーラーやケースファンの回転量を上げるのもひとつのやり方。
ただし回転量を上げると騒音値も上がるため、どのようにチューンするかは用途や好みに合わせて判断してください。
PCゲームのフレームレート検証
まずはFF14ベンチを解像度ごとに回してみました。
| フルHD | 16,523 非常に快適 |
|---|---|
| WQHD | 11,453 とても快適 |
| 4K | 9,870 快適 |
解像度を上げていくごとに評価がダウン。
WQHDや4Kでもそれなりに動かせるとは思いますが、最高画質でサクサク快適にプレイしたいなら解像度はフルHDまでと考えた方が良いでしょう。
続いてMSIのAfterburnerを使用して、人気ゲームの平均フレームレートをフルHD解像度で計測しました。
フォートナイトはDirectX12とパフォーマンス、レンダリングモードごとに検証。
| 競技設定（DirectX12） | 286fps |
|---|---|
| 競技設定（パフォーマンス） | 379fps |
3D解像度と描画距離を最高、その他は最低まで落とした、いわゆる競技設定でソロマッチをプレイ。
どちらも平均値は240fpsを超えましたが、序盤から終盤まで常時240fpsで張り付かせるにはパワー不足。
カジュアルにプレイするには十分すぎる性能ですが、プロゲーマーを目指すような方だと物足りなさを感じるかもしれません。
| 最高画質 | 234fps |
|---|---|
| 低画質 | 293fps |
Apex Legendsもカジュアルマッチを実際にプレイして計測。
最高画質だと平均240fpsには届かずでしたが、こちらもカジュアルに遊ぶ分には十分な性能。
より高フレームレートを求めるなら、画質を下げてのプレイがおすすめです。
そのほかのゲームはすべて最高画質で検証した結果です。
| VALORANT | 512fps |
|---|---|
| Overwatch 2 | 261fps |
| モンスターハンターワイルズ | 82fps |
| CoD:BO6 | 131fps |
VALORANTやOverwatch 2はグラフィックがそこまで重くないこともあり、画質を下げることなく快適にプレイ可能。
モンハンワイルズはウルトラ画質でDLSSはクオリティー、フレーム生成ONでベンチマークを走らせた結果です。
CoD:BO6もゲーム内のベンチマークモードを使用し、極限画質、DLSSクオリティ、フレーム生成ONで計測しました。
| ウルトラ（レイトレOFF） FSR 自動、フレーム生成ON | 150.54fps |
|---|---|
| レイトレーシング ウルトラ DLSS 自動、フレーム生成ON | 52.50fps |
| レイトレーシング オーバードライブ DLSS 自動、フレーム生成ON | 46.08fps |
Cyberpunk 2077は複数の設定でベンチマークを計測。
レイトレOFFなら最高設定でもサクサク楽しめそうですが、レイトレをONにすると大幅にフレームレートがダウン。
最高設定でもそれなりに動かすことはできますが、場面によってはカクつきが目立つかもしれません。
| 最高画質 DLSS サンプリング解像度 75 フレーム生成ON、レイトレOFF | 63fps |
|---|---|
| 最高画質 DLSS サンプリング解像度 75 フレーム生成ON、レイトレ 最高 | 51fps |
黒神話:悟空もレイトレONの最高設定では平均値が60fpsに届かず。
実際にレイトレONでゲームを動かすと40fps前後まで落ち込む場面もあり、動きの速いボス戦も快適にプレイしたいなら画質を落とした方がよさそうです。
ゲーム実況のライブ配信
Twitchでモンハンワイルズのゲーム実況をスムーズに配信できるかも検証しました。
検証時期の都合で製品版ではなくオープンベータ（OBT）でプレイしています。
配信ソフトは無料で使えるOBS（Open Broadcaster Software）を使用し、配信と同時に録画も実施。
別売りのWebカメラを使用して、VTube Studioでアバターも表示しながら試しました。
OBSの主な設定は以下の通り。
| ゲームの設定 | フルHD、低画質 DLSS パフォーマンス フレーム生成ON |
|---|---|
| 出力解像度 | 1080p（1,920×1,080） |
| FPS共通値 | 60 |
| 映像ビットレート | 6,000 Kbps |
| 配信エンコーダ | ハードウェア |
| 音声ビットレート | 128 |
| 録画品質 | 高品質、ファイルサイズ中 |
| 録画フォーマット | mkv 配信後にmp4へ再多重化 |
| 録画エンコーダ | ハードウェア |
VTube StudioはCPUの負荷がそれなりに高く、ゲームを低画質まで落としても、配信＆録画をしながらだとフレームレートは平均80前後まで低下。
ウルトラ画質でも試したところ、VRAM不足のためかモンスターがローポリ状態になってしまい、フレームレートは30にも届かず。
OBSで録画した映像もほぼ静止画になっていました。
モンハンワイルズのように負荷の高いゲームを高画質かつアバターも表示しながら配信するには、今回のスペックでは完全にパワー不足。
ゲームの画質やOBSの設定を調整することで配信自体は可能ですが、PC1台でVTuberとして活動していくなら、もう少しスペックに余裕を持たせた方が良いでしょう。
カジュアル派に好適なコンパクトPC
レビューのまとめとして、G-Master Velox Mini B650A AMD Editionの特徴をおさらいします。
片手で持ち運べるコンパクトケース
人気ゲームが高画質でサクサク快適
最新グラボにもカスタマイズが可能
設定を工夫すればライブ配信も可能
ネジ止めのパネルが多く分解は大変
高負荷はCPUクーラーの音が大きめ
小さいながらもミドルクラスのゲーミングPCらしいパフォーマンスをしっかりと発揮。
ハイスペックマシンとは差があるものの、カジュアルにPCゲームを楽しむには十分な性能です。
設置スペースにあまり余裕がない方や、PCを移動させたい方にとって魅力的な選択肢になることでしょう。
Mini-ITXはパーツの増設や改造が少々大変なため、予算に余裕があれば注文時にメモリやストレージはカスタマイズしておくのがおすすめ。
また、グラボの入荷状況についてはサイコムのX公式アカウントで都度アナウンスがあるため、お目当てのグラボが在庫切れの場合はフォローしておきましょう。
インテリアを邪魔しないコンパクトでおしゃれなゲーミングPCを探している方は、サイコムのG-Master Velox Miniシリーズを検討してみてはいかがでしょうか。
