日本HPが販売するゲーミングPC、OMEN 35Lのモデレートモデル(GT16-0000jp)をお借りしました。
機材貸出元:株式会社日本HP
Ryzen 5 8500GとRTX 4060 Tiで人気ゲームをどれくらい動かせるかはもちろん、高負荷時の騒音や発熱についても検証結果をわかりやすくまとめています。
見た目もおしゃれで満足度の高いゲーミングPCを探している方は、ぜひじっくりご覧ください。
OMEN 35L(AMD)の概要
OMEN 35Lがどういったパソコンなのか、特徴を整理すると以下の通り。
おしゃれで高級感のある新型ケース
人気ゲームを高画質で快適にプレイ
高負荷時もそよ風程度の騒音で快適
PC1台でVTuberとして活動も可能
増設や改造は少々やりづらい
現時点ではやや割高感がある
基本的なスペックから搭載されている内部パーツ、実際に人気ゲームを動かして計測したフレームレートまで、順に詳しくご説明します。
スペック
記事執筆時点で販売されているOMEN 35Lの主なスペックと価格を整理しました。
型番 | GT16-0000jp モデレートモデル | GT16-0001jp アドバンスモデル | GT16-0002jp アドバンスプラスモデル |
---|---|---|---|
OS | Windows 11 Home | ||
CPU | Ryzen 5 8500G | Ryzen 7 8700G | |
クーラー | 空冷 サイドフロー 120mm ARGB | ||
チップセット | B650 | ||
GPU | RTX 4060 Ti | RTX 4070 SUPER | RTX 4070 Ti SUPER |
メモリ | DDR5-6000 32GB(16GB×2) Kingston FURY EXPO対応 | ||
ストレージ | 1TB NVMe SSD Gen4 | ||
電源 | 600W(80PLUS GOLD) | 850W(80PLUS GOLD) | |
無線LAN | 〇(Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4) | ||
標準価格 税・送料込 | 286,000円 | 352,000円 | 418,000円 |
今回お借りしたのはRTX 4060 Tiを搭載したモデレートモデル。
記事執筆時点ではサマーセールが実施中で、周辺機器がセットになったキャンペーンモデルが販売中。
セールの内容や値引き率は時期によって変わるため、タイミングが良ければもう少し安く買えるかもしれません。
CPUにはRyzenの8000シリーズを採用。
7000シリーズではなく、あえて8000シリーズを選んだ理由は謎です。
メモリやストレージもゲーム用途がメインであれば必要十分な容量を搭載。
注文時に増設できると便利なのですが、HPのオンラインストアはカスタマイズに対応していません。
価格や納期、在庫状況は時期によって変動します。最新情報は公式サイトにてご確認ください。
ケース外観
OMENらしさは残しつつ、従来の25Lや40L、45Lとは少し雰囲気が変わりました。
フロントには140mmの大型RGBファンを2台搭載し、エアフローと静音性を強化したようです。
仕様上の寸法は高さが約410mm、奥行きが約408mm、横幅が約210mm。
重量は約14.5kgと、ミドルスペックのゲーミングPCとしては標準的です。
電源をONにすると、前後のファンとCPUクーラー、メモリが発光。
ライティングはプリインストールされている「OMEN Gaming Hub」から、好みに合わせてカスタマイズできます。
光り方はかなり細かくいじれるため、その日の気分に合わせて設定可能。
パソコンが光っていると気が散る、という方は設定でOFFにしておくのがおすすめ。
ケース自体の高級感もあり、見た目の満足度はかなり高いです。
底面にはハメ込み式の防塵フィルターを搭載。
取り外すのは簡単ですが、取り付けは慣れるまで手間取るかもしれません。
メンテナンスのやりやすさを考えると、ここはスライド式にしてほしかったところ。
天面はメッシュ状になっていますが、脱着可能な防塵パネルはありません。
ほこりが目立ってきたときは、ハンディクリーナーなどで掃除するしかなさそうです。
フロントパネルも簡単に脱着が可能。
ケース下側に指を入れられる隙間があり、少し力を入れると取り外せます。
パソコンが倒れると危険なため、あらかじめケースを寝かせてから作業することをおすすめします。
ケース内部へのほこりの侵入を防ぐパネルは、ツメの部分を軽く指で押さえながら引っ張ると取り外せます。
一番ほこりがたまりやすい場所なので、数か月に1回くらいは掃除することをおすすめします。
インターフェイス
電源ボタンなどはケース天面にあります。
- コンボポート
- USB Type-C 10Gbps ×1
- USB Type-A 5Gbps ×2
- 電源
Type-Cが用意されている点や、転送速度が記載されているのもわかりやすくてGoodです。
独自のマザーボードが採用されていることもあり、背面の端子類は控えめ。
- USB Type-C 10Gbps ×1
- USB Type-A 5Gbps ×2
- USB 2.0 Type-A ×4
- ギガビットLANポート
- CMOSクリア
- HDMI2.1 ×1
- DisplayPort1.4a ×3
無線LAN(Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4)も標準搭載。
ご家庭の都合で有線LANをつなげられない方も安心です。
メーカー製のゲーミングPCで、BIOSの設定を初期化できるCMOSクリアが用意されているのはとても珍しく感じます。
BIOSの設定をがっつりいじくりまわす方はほとんどいないと思いますが、設定が不安定になったときはワンタッチで初期化できて便利です。
ケース内部
ケース内部はご覧の通り。
光るファンが3つ採用されているためか、背面側のケーブルは少々ゴチャついている印象です。
ファンハブもありました。
天面にはファンがありませんが、120mmまたは140mmファンを2台搭載できそうなネジ穴は確認できました。
記事執筆時点だと35Lは空冷モデルしか販売されていませんが、公式サイト上では簡易水冷を搭載した写真が多数掲載。
ただ天面のパネルは取り外せない構造で、内側に用意されているパネルを外してファンやラジエーターを取り付けるようです。
メーカー保証が外れてしまうリスクはあるものの、空冷クーラーに不満があれば簡易水冷への交換もできるかもしれません。
マザーボード
マザーボードはMicroATXに近いサイズで、独自仕様のものと思われます。
チップセットはB650を採用。
無線LANのカードや、PCIe Gen4 x4の空きスロットも1つ確認できました。
実際に試してはいませんが、内蔵タイプのキャプチャーボードなども使えるかもしれません。
CPUクーラー
CPUクーラーはRGBファンを搭載したサイドフロータイプ。
仕様によるとヒートパイプは4本で、ファンのサイズは120mm。
見た目やスペックで判断する限り、定番のAK400や虎徹Mk3に近い性能と思われます。
グラフィックカード
グラフィックカードはツインファンのコンパクトなモデルを採用。
傾きやグラつきが発生しないよう、専用パーツでがっちりと固定されています。
メンテナンスなどでグラボを取り外すのは少々大変ですが、サポートステイを別途買う必要がないのは便利です。
メモリ
メモリはKingston製のDDR5-6000 32GB(16GB×2)を標準搭載。
6000MT/sで動かすにはOMEN Gaming Hubからオーバークロックする必要があります。
劇的な性能アップは見込めませんが、動作が不安定になることもないため、せっかくなら性能を最大限に引き出して使うことをおすすめします。
オーバークロック設定時はPCの再起動が求められます。
CPU-Zで読み取った情報は以下の通り。
空きスロットは2つあるものの、マザーボードが独自仕様ということもあり、市販製品との相性問題は未知数。
メモリの交換や増設をする際は、HPのサポートに問い合わせてからメモリを選んだほうがいいかもしれません。
ストレージ
M.2 SSDはヒートシンクのない丸出し状態でした。
CrystalDiskInfoで読み取った情報は以下の通り。
従来のOMENはWestern Digital製のSSDを採用していることが多かったのですが、35LではSAMSUNG製に変わったようです。
ケース前面の下側に3.5インチまたは2.5インチのストレージを増設できるシャドウベイも1台あります。
仕様によるとM.2 SSDの空きスロット(Gen3)も1台あるようですが、くまなく探しても見つけられず。
グラボの裏側にあるのかもしれません。
ストレージの増設はそこまで難しい作業ではありませんが、パーツ改造による故障はメーカー保証が適用されない可能性があるため、くれぐれも慎重に判断してください。
電源
電源はATX3.0に準拠した600W(80PLUS GOLD)を採用。
NVIDIAの公式サイトによると、RTX 4060 Ti搭載マシンの最小システム電力は550W。
容量不足については一切心配無用です。
OMEN 35L(AMD)の性能
ここからは各種ベンチマークソフトを使用して、搭載パーツの性能を数値化していきます。
ベンチマークはすべてOMEN Gaming Hubでパフォーマンスモードに設定して計測しています。
いずれも素人が計測したデータなので、あくまで参考程度にお考えください。
CINEBENCH R23
筆者が計測したCINEBENCH R23のスコアを比較してみると以下の通り。
Ryzen 5 8500Gは今回はじめて使いましたが、マルチコアのスコアは5600とほぼ同じで、正直パッとしません。
ただシングルコアのスコアは7500Fを上回っていて、用途によっては十分な性能を発揮できると考えてよさそうです。
主なRyzen 5とスペックを比較してみると、8500Gは8600Gとほぼ同じに見えますが、8500Gは低消費電力での動作に最適化されたZen 4cコアを採用。
同じ6コア12スレッドでも、厳密には中身(構造)が異なります。
ゲームに重要とされるL3キャッシュの容量も16MBと控えめで、ゲーム性能という点では7500Fや7600に劣ると考えるのが自然です。
3D Mark
SpeedWayのスコアも過去のデータと比較しました。
RTX 4060 Tiとしては標準的なスコアでした。
フルHD解像度であれば、幅広いゲームを最高画質で快適に動かせるスペックです。
WQHDを視野に入れているなら、RTX 4070 SUPERを搭載した上位モデルを選んだほうが良いでしょう。
Crystal Disk Mark
Gen4 SSDとしては標準的な転送速度です。
書き出しは速度が落ちていますが、体感できるほどの差はないため気にする必要はないでしょう。
一般的なSSD(SATA)やHDDと平均的な転送速度を比較すると、以下の通り。
NVMe M.2 SSD (Gen 5) | 10,000MB/s |
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NVMe M.2 SSD (Gen 4) | 4,000~7,000MB/s |
NVMe M.2 SSD (Gen 3) | 2,000~3,000MB/s |
SSD(SATA) | 550MB/s |
HDD | 120~160MB/s |
静音性
市販の騒音計(サンコー小型デジタル騒音計)を使用して、用途ごとの騒音を計測しました。
驚異的な静かさです。
従来のOMENは高負荷時にうるさくなるものが多く、静音性がひとつの弱点でしたが、35Lは高負荷時でも常時静か。
足元にPCを設置してゲームをしていると、ほとんど音が気にならないレベルです。
何か設定を間違えているのかと何度も確認しましたが、フルパワー状態でも騒音値が43dBを超えることはありませんでした。
上位モデルだともう少し騒音値が上がるかもしれません。
筆者が使用している騒音計の目安は以下の通り。
60dB~ | 掃除機に匹敵するほどうるさい 遮音性の高いイヤホンやヘッドセットが必須 |
---|---|
50~60dB | 大多数の人がうるさく感じる イヤホンやヘッドセットの使用が必須 |
45~50dB | ファンの音がやや気になりはじめる イヤホンやヘッドセットの使用を推奨 |
40~45dB | ファンの音は聞こえるが不快ではない スピーカーでもゲームはプレイ可能 |
38~40dB | PCに耳を近づけると音が聞こえる程度 スピーカーでも快適にプレイが可能 |
冷却性能
CINEBENCH計測中のCPU温度は、最大で67℃。
CPUクーラーが極めて優秀というより、Ryzen 5 8500Gは発熱がかなり控えめなようです。
普段筆者が使用しているAfterburnerではCPUの温度をモニタリングできず、ゲーム起動中のCPU温度は確認できず。
ただCPU使用率100%で最大67度だったので、実用上の問題はまったくないと思われます。
PCゲームのフレームレート検証
まずはFF14ベンチを解像度ごとに回してみました。
フルHD | 16,469 非常に快適 |
---|---|
WQHD | 12,056 とても快適 |
4K | 10,219 快適 |
解像度が上がるごとに徐々に評価が下がっています。
そこまで重くないゲームであれば、WQHDでも快適に動かせるかもしれません。
最高画質にこだわるなら、解像度はフルHDまでと考えた方が良いでしょう。
続いてMSIのAfterburnerを使用して、人気ゲームの平均フレームレートをフルHD解像度で計測しました。
フォートナイトはDirectX12とパフォーマンス、レンダリングモードごとに検証。
競技設定(DirectX12) | 231fps |
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競技設定(パフォーマンス) | 249fps |
3D解像度と描画距離を最高、その他は最低まで落としてプレイ。
横並びで比較したわけではありませんが、過去のデータと照らし合わせると、Ryzen 5 7500Fと比べてフレームレートが伸びづらいように感じました。
カジュアルにプレイするには十分な性能といえるものの、競技シーンを目指すような方だと物足りなさを感じそうです。
最高画質 | 209fps |
---|---|
低画質 | 229fps |
Apex Legendsは最高画質でも平均値は200fpsを超えますが、戦闘時は瞬間的に170fps前後まで落ち込むことも。
画質を落としても平均値は240fpsに届かずでした。
そのほかのゲームはすべて最高画質で検証した結果です
VALORANT | 257fps |
---|---|
Escape from Tarkov | 94fps |
Overwatch 2 | 263fps |
ゴーストオブツシマ | 133fps |
パルワールド | 76fps |
ELDEN RING | 60fps |
Starfield | 151fps |
Cyberpunk 2077 | 39fps |
Forza Horizon 5 | 122fps |
VALORANTは最高画質で快適に動かせましたが、フレームレートはイマイチ伸び切らず。
筆者のようなカジュアルゲーマーであれば十分快適ではあるものの、ガチ勢の方にはおすすめしづらい印象です。
また、グラフィックが極めて重たいCyberpunk 2077は最高設定だと平均60fpsに届かずでしたが、一段階設定を下げれば平均60fps以上で安定していました。
ゲーム実況のライブ配信
ゲーム実況をTwitchでスムーズに配信できるかも検証しました。
配信ソフトは無料で使えるOBS(Open Broadcaster Software)を使用し、配信と同時に録画も実施しています。
別売りのWebカメラを使用して、VTube Studioでアバターも表示しながら試しました。
OBSの主な設定は以下の通り。
ゲームの画質 | 低 |
---|---|
出力解像度 | 1080p(1,920×1,080) |
FPS共通値 | 60 |
映像ビットレート | 6,000 Kbps |
配信エンコーダ | ハードウェア |
音声ビットレート | 128 |
録画品質 | 高品質、ファイルサイズ中 |
録画フォーマット | mkv 配信後にmp4へ再多重化 |
録画エンコーダ | ハードウェア |
VTube Studioはそれなりに負荷が高く、配信&録画をしながらだとフレームレートは160前後までダウン。
ゲームに合わせて設定の調整は必須ですが、PC1台でVTuberとしてゲーム実況の配信もできそうです。
ただ本格的にストリーマーとして活動するつもりなら、ハイスペックなCPUとGPUを搭載した上位モデルを選んだほうが無難です。
今後のセールや値下がりに期待
レビューのまとめとして、OMEN 35Lの特徴をおさらいします。
おしゃれで高級感のある新型ケース
人気ゲームを高画質で快適にプレイ
高負荷時もそよ風程度の騒音で快適
PC1台でVTuberとして活動も可能
増設や改造は少々やりづらい
現時点ではやや割高感がある
ゲーム性能という点に着目すると、記事執筆時点ではRyzen 5 7500FとRTX 4060 Tiの他社製品が18万円前後で買えるため、OMEN 35Lはやや割高と言わざるを得ません。
HPのゲーミングPCは発売からしばらくは価格が高めで、徐々に価格を下げていくパターンが多いため、今後のセールに期待したいところ。
個人的には高負荷時もほとんどうるさくならない点が本当に素晴らしく、静音性重視でゲーミングPCを探している方には魅力的な選択肢になりそうです。
HPのオンラインストアはセールの内容がコロコロ変わるので、OMENが気になっている方はこまめにチェックしてみてください。